
西遊記の三蔵法師一行に本能的で欲の塊のような奴がいる。
猪八戒(以下、八戒)である。
八戒は戦いもそれほど強いとは言えず、妖術も少ないが、過酷な旅に笑いをもたらすことにより、一行を和ませている。
そんな八戒には、困ったところも多く、それがお荷物の要因である。
本記事では八戒の内面とマニアのみが知る点について述べたいと思う。
★短所の塊
八戒は女好きで大食漢、怠け者、ほら吹き、小心者、口達者、不平不満が多い、自己保身といった本能と欲望に手足が生えたような奴である。
また、悟空と口論をすることも多く、それを根に持って三蔵に緊箍呪(経文を唱えると頭が痛くなる奴)を唱えさせようとする悪知恵を持ち合わせている。

★敵前逃亡
三蔵が黄袍怪という妖怪にさらわれたことがあった。
この時、頼りになる悟空は破門中で故郷の花果山に帰っていた。
八戒と沙悟浄が黄袍怪と戦うが、かの者は強敵で、二人がかりでも歯が立たない。
形勢不利と思った八戒は、あろうことか沙悟浄に戦いを丸投げして草むらに逃げ込み、おのれは爆睡してしまった。
もちろん、残された沙悟浄は一人では勝ち目がなく、敗れて捕らえられた。
八戒は「保身のために仲間を見捨てて遁走する」というとんでもない一面を持っているのだ。
★天蓬元帥
八戒はもともと、天上界の将軍で水軍指揮を任されており、役職名を天蓬元帥という。
女癖の悪さで知られ、蟠桃会の折に酔った勢いで嫦娥(じょうが)に強引に言い寄った為、鎚で2000回打たれる刑罰をうけた後、地上に落とされた。
地上では真っ当に生きようと決心し、人間に生まれ変わるはずだったが、誤って雌豚の胎内に入り、黒豚の妖怪となってしまった。
その際に雌豚の腹を噛み破って生まれ、群れの他の豚も打ち殺して、福陵山で人食い妖怪となる。
その後、武芸をたしなむことを見初められ、福陵山雲桟洞の女妖怪であった卯二姐(マオアルージェ)に婿として迎えられるが、一年余りで妻とは死別し、彼女の財産を使い果たすと、また人を喰らうようになった。
ある日、天竺に経典を取りに行く人物を探していた観音菩薩と恵岸に出会い、菩薩と知らずに最初は襲撃するが、知って慈悲を乞う。
菩薩に猪悟能(ちょごのう)という名を与えられ、三蔵の弟子となるように命じられると、それをきっかけに人食いを止め、自らの意志で精進料理だけの食生活をしながら、その時がくるのを待った。
しかし、待ちくたびれてしまい、人里におりていくと猪剛鬣(ちょごうりょう)名乗って、烏斯蔵(うしぞう)国高老荘の商家に対する婿入りを強行し、高太公の末娘の高翠蘭を娶る。
高老荘で暮らすようになってからは尋常ならざる大飯喰らいで高太公を悩ませていたものの、娘に危害を加えることはせず、酒や葷(なまぐさ)は食さずに精進を貫き、家業にも励んで財産をなしていた。
ところが、突然現れた悟空との戦いに敗れ、福陵山に逃げ帰る羽目に陥った。
これは「化け物を婿にとったというのでは世間への体裁が悪い」と思った高太公が婿退治を三蔵に頼み込み、悟空が派遣されたからである。
八戒は、この戦いで相手が観音菩薩の予告した取経者の一行だと知ると降参し、ねぐらの雲桟洞を焼き払って、三蔵に弟子入りしたのだった。

★名前の由来
五葷三厭を食べないでいたことに感心した三蔵が、念願が叶ったので物忌をもう止め普通に食べたいという猪悟能をおしとどめて、猪八戒という別名を与え、以後も戒めは守り続けるように諭した。
これは仏教で忌み嫌われた八つの生臭物(五葷三厭・・・ごくんさんえん。“五葷”は強い香りと辛味のあるニンニク・ニラ・ネギ・ラッキョウ・野蒜の五つの野菜、“三厭”は 天上の雁、地上の狗、水中の烏魚を示し、即ち獣肉・鳥肉・魚肉の事)を口にせず戒律を守った事を褒め称えての命名であった。
彼はこれを承諾し、一行に加わった。
★武器の名前
八戒の得物である、鍬のような武器の名を知っている人がいたら、相当なマニアである。
あの武器は釘鈀(ていは)といい、天蓬元帥に任命された時に天帝から授けられた。
そのため、単なる鍬ではなく、天上界の神が用いる武器なのだ。
★終わりに
西遊記をこれから読みはじめる人も極めた人も本記事を楽しんでもらえただろうか?
八戒はとんでもない奴である。
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