
現代の日本社会では、児童虐待の件数が年々増加し、深刻な社会問題となっている。
その背景には「毒親」と呼ばれる、子どもに過度な支配や暴力、無関心を示す親の存在がある。
毒親による虐待は単なる家庭内の問題ではなく、貧困・孤立・精神的負担・社会的プレッシャーといった複雑な要因が絡み合って発生しており、子どもの心身に深刻な影響を与える。
さらに、虐待は世代間で連鎖する可能性があり、社会全体で取り組むべき課題だ。
本記事では、なぜ毒親による児童虐待が現代日本で増えているのか、その理由と背景を解説し、私たちが考えるべき視点を提示する。
★増え続ける児童虐待の現状
日本社会では児童虐待が深刻な問題となっており、年々その件数は増加している。
ここでは最新の状況と背景を整理する。
相談件数の急増
厚生労働省の統計によると、児童相談所が対応した虐待相談件数は2023年度に約22万件を超え、過去最多を更新。
10年前と比べて約3倍に増加しており、社会全体で深刻化している。
虐待は「身体的虐待」「性的虐待」「ネグレクト(育児放棄)」「心理的虐待」の4つに分類される。
虐待の発覚経路
学校や保育園など教育機関からの通報が増加。
近隣住民や親族からの通報も増えており、社会的認知が広がっている。
警察からの通報件数も増加し、行政と連携した対応が進んでいる。
背景にある社会的要因
経済的困窮:非正規雇用や低所得世帯の増加。
育児の孤立化:核家族化や地域コミュニティの弱体化。
親自身の問題:うつ病やDV被害、過去の虐待経験が影響する。
社会的プレッシャー:「完璧な親であるべき」という価値観が親を追い詰める。
虐待がもたらす影響
子どもの心身の発達に深刻な悪影響。
学習意欲の低下や不登校、精神疾患のリスク増加。
成人後も人間関係や社会生活に困難を抱えるケースが多い。
虐待は「世代間連鎖」するおそれがあり、社会全体の課題となる。

★虐待が起こる背景
児童虐待が起こる背景には、親の性格や家庭環境だけでなく、貧困・孤立・精神的負担・社会的プレッシャーといった複雑な要因が絡み合っている。
以下に要因について掲載する。
経済的困難(貧困)
非正規雇用や低所得世帯の増加により、生活基盤が不安定な家庭が増えている。
経済的に追い詰められると、育児放棄(ネグレクト)や暴力的な行為が起こりやすくなる傾向がある。
親の孤立と育児支援不足
核家族化や都市化によって地域のつながりが希薄化し、親が孤立しやすい状況にある。
育児に関する相談相手がいないことで、ストレスが蓄積し虐待につながるケースが増えている。
親自身の心の問題
母親のうつ傾向、健康不良、DV被害経験などが虐待リスクを高めることが研究で確認されている。
親自身が過去に虐待を受けていた場合、その体験が「世代間連鎖」として子供に向かうこともある。
社会的プレッシャーと固定観念
「母親は完璧であるべき」「父親は稼ぐべき」といったジェンダー役割の固定観念が親を追い詰める。
育児に失敗できないという強いプレッシャーが、心理的虐待や過度な支配につながることがある。
多子家庭やひとり親家庭のリスク
多子家庭では育児負担が大きく、身体的虐待が起こりやすい傾向が見られる。
ひとり親家庭では経済的困難や孤立が重なり、ネグレクトのリスクが高まる。

★毒親という言葉の意味
「毒親」とは、子供にとって有害な影響を与える親を指す俗語であり、過度な支配・過干渉・暴力・無関心などによって子供の心身を傷つける存在を意味する。
ここでは、毒親の特徴について整理した。
定義と由来
「毒親(どくおや)」は英語のtoxic parentsに由来する言葉。
アメリカの心理学者スーザン・フォワードが1989年に著書「Toxic Parents」で用いた概念が日本に紹介され、1999年に「毒になる親」として翻訳出版され広まった。
学術的な診断名ではなく、社会的に使われる俗称だ。
特徴
毒親に見られる典型的な行動は以下のとおりだ。
- 過度な支配や管理:子どもの人生を親の価値観で決めようとする
- 過干渉・過保護:必要以上に子どもの生活に介入する
- 否定や暴言:子どもの人格を否定する言葉を繰り返す
- 無関心やネグレクト:育児放棄や精神的な距離を置く
- 依存や過剰な期待:親の欲求を満たすために子どもを利用する
いずれも感情のコントロールができないことにより、子供が常に親の機嫌を伺うようになり、安心できない家庭環境が作られるのだ。
子供への影響
毒親による児童虐待は、子どもの心身の発達に深刻な影響を与える。
その影響は幼少期だけでなく、成人後の人生にも長く続くことがある。
- 自己肯定感の低下:常に否定されることで自信を失う
- 人間関係の困難:恋愛や職場で健全な関係を築きにくくなる
- 精神的問題:うつ病や不安障害などのリスクが高まる
- 世代間連鎖:毒親に育てられた人が、自分も毒親になるおそれがある
毒親による虐待は、子どもの 心・行動・身体・将来 にわたって長期的な悪影響を及ぼす。
特に「自己肯定感の低下」と「世代間連鎖」は社会全体に深刻な課題を投げかけている。

★なぜ現代日本で増えているのか
児童虐待は「親の性格や家庭の問題」だけではなく、日本社会の構造的な変化が大きく影響している。
以下に主な理由を整理する。
経済的困難と格差の拡大
非正規雇用や低賃金労働の増加により、家庭の生活基盤が不安定化。
経済的に追い詰められると、育児放棄(ネグレクト)や暴力的行為が起こりやすくなる。
貧困家庭では「子どもに十分な食事や教育を与えられない」状況が虐待につながる。
核家族化と地域のつながりの希薄化
昔は「地域で子育てを支える」仕組みがあったが、都市化で失われつつある。
親が孤立し、育児の悩みを相談できない環境がストレスを増幅。
孤立した親ほど、虐待に走るリスクが高まる。
親自身の心の問題
うつ病や精神疾患、アルコール依存、DV被害などが虐待の背景に存在。
親自身が過去に虐待を受けていた場合、その体験が「世代間連鎖」として再び子どもに向かうケースも多い。
社会的プレッシャーと育児ストレス
「母親は完璧であるべき」「父親は稼ぐべき」といった固定観念が親を追い詰める。
共働き世帯の増加により、仕事と育児の両立が難しく、ストレスが蓄積。
育児に失敗できないというプレッシャーが心理的虐待や過度な支配につながる。
通報体制の強化による「見える化」
学校や保育園、警察などからの通報が増え、虐待が「発見されやすくなった」ことも件数増加の一因。
これは悪化ではなく「社会が虐待を見逃さなくなった」側面もある。

★防止のために必要なこと
児童虐待を防ぐためには、家庭だけでなく社会全体で支える仕組みが不可欠である。
毒親による虐待は「親の問題」として片付けられがちだが、背景には 貧困・孤立・精神的負担・社会的プレッシャーが存在する。
これらを解消するために必要な取り組みを整理した。
地域や社会全体で子育てを支える仕組み
地域コミュニティや学校、保育園が連携して「見守りネットワーク」を構築。
子育て家庭が孤立しないよう、地域での交流や支援活動を強化。
育児支援サービスの充実
一時保育やファミリーサポートなど、親が休める仕組みを整える。
経済的困難な家庭への生活支援や子育て手当の拡充。
相談窓口を増やし、気軽に利用できる環境を整備。
親自身への心理的ケア
うつ病や精神疾患を抱える親への医療・心理的支援。
DV被害者への保護と支援を強化する。
親が安心して「助けを求められる」環境を作る。
虐待予防教育と社会的啓発
「体罰はしつけではない」という認識を広める。
学校や地域で虐待防止の教育を行い、子ども自身がSOSを出せる力を育てる。
メディアや行政による啓発キャンペーンで社会全体の意識を高める。
行政と専門機関の連携強化
児童相談所、警察、学校、医療機関が情報を共有し迅速に対応。
虐待の兆候を早期に発見し、未然に防ぐ体制を整える。
専門職員の増員と研修を行い、対応力を高める。

★終わりに
現代日本における児童虐待や「毒親」の問題は、単なる家庭内の出来事ではなく、社会全体の構造的課題として捉える必要がある。
貧困や孤立、精神的負担、社会的プレッシャーなど複数の要因が絡み合い、親を追い詰め、子どもに深刻な影響を与えてしまうのだ。
虐待を防ぐためには、親を責めるのではなく、親を支える仕組みを社会全体で整えることが重要。
地域の見守り、行政や専門機関の連携、心理的ケアの充実、そして「体罰はしつけではない」という認識の広がりが、未来の子どもたちを守る鍵となる。
子供は社会の宝であり、健やかに育つ権利を持っている。
虐待を「見えない問題」とせず、私たち一人ひとりが関心を持ち、支援の輪を広げていくことが、次世代に安心して生きられる社会を残すために欠かせないのだ。
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